真実っぽい「思考」を疑ってみる。
~ 嘘は宙を舞うが、真実は後からのろのろとついていく~
ジョナサン・スウィフトの言葉には
タイムトラベル感がある。真理ゆえ、だろうか。
彼の作品は、出版されてから一度も絶版することなく現代でも読み継がれる「ガリバー旅行記」。
小説の痛いほどの風刺性だけでなく
当時知られていなかった、火星の衛星についての正確な描写があるなど作家スウィフトの千里眼が朽ちることなき名作をもたらした源なのか。
冒頭の『嘘は宙を舞う… 』は、「政治的なうそ」という1710年に書かれたエッセイからの引用。
フェイクニュースや虚偽、捏造、隠蔽、歪曲、過剰な演出などが
そこかしこで噴出する21世紀にも
刺さってくる表現にタイムトラベル感があるのです。
スウィフトから300年後の
2002年。
ダニエル・カーネマンという行動経済学者が「プロスペクト理論」
によってノーベル経済学賞を獲得。
この発見のすごさは、それまでの
経済学的な矛盾(説明のつかないこと)を
解決する新しい視点を発見したこと。
プロスペクト理論の肝は
「金額が同じであるのにも関わらず、人は
利得(千円儲けた)よりも損失(千円失った)を重大に評価する」というもの。
これは、古典的経済学の前提である
「合理的経済人」に反する理論だったので
世界へ与えた衝撃もおおきく、また
学問的な綻びを生んだことで
「非合理的な人間」の研究基礎が築かれ、
そうした行動経済学的な視点から
合理的とはおもえない、人間の「愚」な「知」が解明されることになるのです。
日本では2014年にカーネマンの著作
「ファスト&スロー」が発売。
ファスト= 速い
スロー= 遅い
人間にそなわる
2つの思考をスピードで分類し、
ほぼ自動で認知処理が進む
速い思考(システム1)が、どれほど
人の認知を歪ませ
嘘を本当っぽくしているのかを
説いている、ファスト&スロー。
いわゆる、認知バイアスが
『無知の知』
という闇を人から奪う方法について。
次回、みていきます。
「うそは宙を舞うが、真実は後からのろのろとついていく。だから、真実に気づいたときには手遅れだ。
すでにゲームは終わり、作り話はその役目を果たしている。
それは、話題が変わった後や仲間と別れた後に、気の利いたウィットを
思いつくようなものだ。あるいは、患者が亡くなった後に、
絶対に効く薬を見つけた医者のような」
ジョナサン・スウィフト (エッセイ 政治的なうそ)